一人で抱え込まないで!
リモートワーク、オンライン面談…コロナウイルスの影響により、人のコミュニケーションもますます「会わずに完結」する世界が到来しました。
今までなら仕事の合間にコーヒー片手に雑談…というのも見慣れた光景でしたが、在宅で仕事をしているとこうした余暇の部分はなかなか生まれません。
なかには、
- 仕事で悩んでいる部分があるけど、今までのように気軽に相談できない…
- わざわざ電話で他愛もない話をするわけにもいかないしな…
- 今までよりも、悶々とする時間が増えた…
と感じている方もいるのではないでしょうか。
事実、コロナが到来してから鬱病になった人の数は急増しており、いかに「他人と話をすること」が重要なのかということが分かります。
そこで今回は「話を聞いてもらう」ことがどれほど重要で、自分のストレスを軽減できるのか、どんなことに気を付ければ良いのかという件に関して、科学的な根拠も示しながら開設したいと思います。
この記事を読んでいただき、不安な時代でも健康に毎日を過ごせる環境を構築していただきたいと思います。
話を聞いてもらうことで得られる3つの効果
まずは「話を聞いてもらうこと」が心理学の観点ではどのように整理されているかについて、3つの観点からお伝えしたいと思います。
心をキレイにする「カタルシス効果」
カタルシスとは日本語で「浄化する、キレイにする」という意味で、オーストリアの精神科医であるフロイト医師が提唱したものです。
心に抱えた負の感情をため込まず、洗いざらい吐き出すことで精神が安定するというもので、実際に心理学的な治療法として活用されています。
誰かの悪口や仕事の言い訳、愚痴などは、一見すると非常に他人には言いづらいですよね。
「誰か関係者に聞かれてしまって、自分の立場が不利になったらどうしよう…」
「聞いてくれた人が、実は不快に思っていたらどうしよう…」
という気持ちになり、抑え込んでしまう人も多いのではないかと思います。
しかし、時にはこうした心に積もった負の感情も、荷下ろしをしないとメンタルがおかしくなってしまいます。
奥さん、親友、兄弟、両親など、利害関係なく「うん、うん」とただ聞いてくれる存在がいることは、本当にありがたいのかもしれません。
私だけではないと思う「バディ効果」
また、負の感情だけに留まらず、誰かに話を聞いてもらい
「俺もそう思うよ」「私もそれ、分かるな」と共感してもらえるというのは、心理学の世界で「バディ効果」といい、自分が悩んでいることはおかしいことではないという安心感につながると言われています。
- 家族が病気になり、治療費や働く場所、家族とのやり取りのことで不安になる…
- 離婚してしまい、自分が社会不適合者のように思えてきた…
- 仕事で出世できず、同期に置いて行かれている気がする…
人間、どれだけ頑張っても調子の悪い時はあります。
そんな時に同じような悩みを抱え、それを乗り越えて元気に生きている人の共感が貰えれば、解決しない問題もいつかは…と前向きになれそうですよね。
無理に人脈を増やす必要はないですが、自分よりも豊富な経験をしている先輩や上司と日頃から懇意にすることの意味は、ここにあるのかもしれません。
見ていなかった世界が広がる?「アウェアネス効果」
また、経験が豊富な上司や先輩に話を聞いてもらう際には、
「ああ、それ分かる」と理解してもらうだけではなく、自分が全く考えてもいなかったような視点の意見を示唆してもらうこともあるかと思います。
心理学の世界ではこれを「アウェアネス効果」と言い、上の2つの効果に加えてメンタルヘルスを保つための重要な手法と言われています。
たとえば、筆者は大手金融機関に就職してすぐ、他の同期が東京の有名店に配属されるなか、1人九州行きの飛行機のチケットを渡されて田舎の支店に配属されることになりました。
もちろん根拠があるわけではないですが、若かった自分は
- 新人研修中の成績が良くなかったから、地方店に左遷されてしまったのか…
- 地方店はお客さんの数も少なく、今後のキャリアも暗いのではないか…
等と、まだ現地に行く前から落ち込んでしまいました。
しかし、当時既にロンドンの超エリート部署で勤務していた2つ上の先輩が、実は新卒行員の頃は関西の小規模店で下積みをしていた…という事実を知り、
「地方での中小企業向けの営業現場を知ったことは、今のロンドンでの仕事にも活きている」
という視点を教えてもらったことで、むしろワクワクして九州に向かったことを思い出します。
人間、自分だけで得られる経験には限界があります。他人の経験を話を聞くなかで取り入れることは、本当に重要なことかもしれません。
あなたは誰に話す?話を聞いてもらう「相手」
話を聞いてもらうことでストレスが軽減されることは、心理学の観点で証明されていることは分かりましたが、皆さんにはいざという時に話を聞いてもらえる人はいるでしょうか。
ここでは、自身が窮地に陥った時に話せる相手別に、筆者が考えるメリット・デメリットを紹介します。
職場の同僚・上司
人生で多くの時間を費やす仕事における関係者への相談は、それそのまま仕事の環境を改善できる可能性があり、効果的です。
時には同じ悩みを抱えている同期に話を聞いてもらえることで「バディ効果」を得られるかもしれませんし、経験豊富な上司から視野を広げてもらえることもあるでしょう。
一方、仕事には必ず「評価」というものが付きまといます。
いくら腹が立って同僚や上司に悪口をぶちまけたくなっても、それが人事部や評価者の耳に入れば決して良い印象を受けることはありません。
話をする際は他人を貶める内容ではなく、あくまで誰かを傷つけない内容に関して、正直に話せると良いかもしれませんね。
妻や両親(家族)
これだけ人間のコミュニケーションが変わってきた今でも「家族の絆」は最強です。
血を分けた両親はもちろんのこと、長年2人で問題を乗り越えてきた夫婦関係などは、もはや戦場で生き残った「戦友」のごとく強固な関係になっていることでしょう。
あくまで業務上の関係だけである上司や同僚とは異なり、とても外では言えないような罵詈雑言も、静かに聞いて共感してくれるかもしれません。
ただし、重要な関係性だからこそ「甘え」が出てはいけません。
日本では3組に1組の夫婦が離婚しているように、どちらかがどちらかに依存してしまうことで、強固な関係性も崩れてしまいます。
話を聞いてもらいたいと持ちかけるのであれば、同じように自分が話を聞く時間を設ける必要もあると考えます。
ネット等のコミュニティで知り合った社外の友人
マッチングアプリ、ネットゲーム、SNSなど、なかなか現地で集まることが難しくなっている現在、話を聞いてもらう相手もどんどんネット世界で見つける時代です。
最近では行政やNPO法人がチャット等で悩みを聞いてくれるようなサービスも充実しており、今後もこの流れはますます伸びてくるのではと思います。
一期一会、顔が見えずに話を聞いてもらえる関係だけにあとくされも起きにくく、意外と深い関係でない相手への相談で得られることは多いはずです。
注意点はもちろん、セキュリティ面やプライバシー面。後任心理士や精神科医がやっているサービスであれば信頼度も高いですが、なかには単にお金稼ぎをしたいがためにフリーランスサイトで電話相談を展開しているようなものもあります。
それらが全て悪いとは言わないまでも、相談した結果余計に不安になった…ということがないよう、サービスは事前にしっかり調べたいところです。
ストレス発散の最後の砦「社会的支援要請コーピング」
「話をきいてもらうこと」の他にも、人間には多数のストレス解消法があります。
たとえば、
- 問題がどこにあるのかをノートに書き出し、論理的に1つ1つ行動して解決する
- 筋トレ、水泳、ジョギングなどの適度な運動を繰り返して発散する
- 食生活を健康なものに切り替えて、体重を適正に保つ
- ストレスの原因となる人やものから完全に距離を置くため、転職をする
など、自分の生活スタイルにあったストレス解消を目指すのが良いでしょう。
一方、これらの解消法はどれも「自分1人だけ」で解決しないといけないもので、一定の効果がありますが、適応障害や鬱病になるほど追い込まれてしまい動けなくなると、使えないストレス発散法とも言えます。
そんな時はやはり、誰かの手を借り、話を聞いてもらうことでストレスを撃退するほかありません。
日本看護協会によれば、これらストレス解消法のことを「コーピング」と言い、特に他人の協力が不可欠な話を聞いてもらう解決手法を「社会的支援要請コーピング」と呼びます。
追い込まれた時「自分で何とかせねば」と思うのはとても危険です。
無理せず、関係者でも外部機関でも、頼ることに問題はありません。
どこにでもあなたの話を聞いてくれる人はいる、という気持ちを持つことが大事かもしれませんね。
話相手を作っておくと気持ちが楽になるぞ!
まとめ:話を聞いてもらうことで、道は開ける
コロナ、コロナと言われて人間の対面コミュニケーションが減り、雑談等の余白の会話がなくなってしまったからこそ、悶々とした気持ちは誰かに話を聞いてもらって解消することを忘れてはいけません。
- 自分は友達が少ないから…
- 家族と離れて生活しており、土地勘がない所で仕事をしているから…
- 事情があって、職場の人間関係がぎすぎすしているから…
もちろん、人によって様々な事情があり、自分にはいざという時に話をできる人がいない…と絶望してしまった方もいるかもしれません。
しかし、日本は急ピッチで公的・民間の相談サービスが発達しており、調べればいくらでもあなたの話を聞いてくれる人はいます。
この記事を呼んでくれた皆様の明日からの生活が、安心できるものになることを願います。
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